松谷先生! 今日のお悩み相談は「板書が苦手」についてです。
小学生のお母さんたちから相談をもらっているんですけど、こういうことって、先生に相談できますか?
✔ 板書が超テキトーな上、字が汚い
✔ 板書が遅く、授業が頭に入ってない
✔ 板書が苦手で手が止まってしまう
✔「やりなさい」と強制するとできる
✔全部ひらがなで板書してしまう
もちろん!
「ノートをちっとも取らないので、授業参観で『ちゃんと写さないと帰るよ』と言ったら、ものすごい勢いで書くんです。できるなら、やれよ!って、イラっとします」
「ノートを取るのが遅くて間に合わないから、授業で教わったことが抜けていっちゃうんです。だから、宿題もできなくて。このままだと、勉強についていけなくなるのでは、と心配です」
などなど、お母さんたちの心配とご苦労が伝わってきます・・・
お母さんはいつも、心配と気苦労でいっぱいいっぱい。
ため息が尽きないんだよ。
そうですよね。
「ノートをちゃんと取りなさい」って言い続けたら、いつか自然に取れるようになるんでしょうか?
毎日のお母さんたちの苦労を考えると、そんな淡い期待でもないと、やってらなれないと思うんです。
成長とともにできるようになることは、もちろんあるよ。でも、そうでない子もいる。
「ちゃんとノートを取りなさい」の前に、「なぜ、この子はノートが取れないの?」を先に考える必要があるね。
なるほど。では、今日は「板書が苦手」な小学生の子たちの原因と対策についてお願いします!
「板書が苦手」は、やる気の問題ではない? その意外な 3 つの理由
学校から帰った我が子の宿題がちっとも進まない。様子を見てみると、授業の内容を理解していない様子。なぜだろうと思い、子どものノートを見てみると・・・
✔ 写してあるけど、テキトーすぎて本人もわからない
✔ ノートを全部写してない
✔ ほとんど何も書いてない
などなど。
「なぜ、ノートが取れないの? 写すだけでしょ?」という疑問が、あなたの中には浮かんでいるはずです。
やる気がないのかな? 集中力がないのかな? 勉強が嫌いなのかな?
もちろん原因は一人一人違いますが、ビジョントレーナーの視点と私のこれまでの経験から考えると、その原因は大きく分けて 3 つあると考えられます。
1. 視力に問題がある
・ 近くを見るのが苦手(ノートの文字が見えにくい)
・ 遠くを見るのが苦手(黒板の文字が見えにくい)
2. 字を書くのが苦手(指先の神経が未発達)
3. 文字が歪んで見えている(認知力が弱い)
1. 視力に問題がある: 遠視や近視の可能性も
板書ができない理由として最初に考えられるのは、「見えていないのでは?」という、視力の問題です。
「目が悪い」ということだけが原因であれば、メガネをかければ済む話ですが・・・問題はそんなに単純ではありません。
「見えてないのでは?」という場合、2つの原因が考えられます。
1-1. 近くを見るのが苦手(ノートの文字が見えにくい)
あなたのお子さんが視力検査をして両目ともに 1.0 だったとします。そうすると目には問題がないので、
「黒板の字ははっきり見えているはず」「ノートの紙面もはっきり見えているはず」
と思いますよね? なのに、なぜ板書を写すのが苦手なのでしょうか?
それは、「遠視」の可能性があるかもしれません。私が、過去にトレーニングをしてきた子の中にも、目が良いのに板書が苦手だという子がいました。その原因は「遠視」にありました。
これは両親ともに目が良いと特に気づきにくい特徴ですが、視力が 1.0〜2.0 など、学校の視力測定で視力に問題はないと判定された子の中には
「遠くは見えるけど、近くは目を凝らさないと、よく見えない」
という遠視の症状を持った子がいます。
この場合、黒板の文字は見えるけど、ノートに書き写そうとすると、目を凝らさないと手元がぼんやりとしか見えません。正確に書こうとすればするほど、常に目を緊張させてノートを見ることになるため、「書く」という作業がとても負担になります。
すると、子どもは次のような「板書が苦手」だと思われる行動をします。
・ 手元を見ずに黒板を見たまま、ノートを書く
・ 近くを見ると目が疲れるので、そもそも書かない
・ 書こうとするが、時間がかかる
などは、こうした原因が行動として表に出てきている可能性もあるのです。
遠視の程度がひどいと、遠くも近くも見えにくなります。子どものうちは遠視の程度が軽い場合が多いので、遠くはわりと見えます。そのせいもあり、学校の視力検査では発見が遅れることがあるのです。
1-2. 遠くを見るのが苦手(黒板の文字が見えにくい)
これとは反対に、「近くは見えるけど、遠くが見えにくい」という場合もあります。これは「近視」の目の症状です。
この場合は、黒板の文字が見えていない、もしくは見えていてもぼんやりとしたモヤがかかった状態になっているので・・・
・ 黒板の文字を見て板書せずに、先生の話を聞いてノートをとる
という行動になります。そのため、内容が中途半端だったり、そもそも板書をしなかったりするのです。
このように、「遠視」「近視」の程度により、「遠くを見る」「近くを見る」という切り替えが上手くできないことがあります。上手くできていない場合、子どもは無意識にストレスを感じてしまいます。そのため、「ノートを取るのは疲れるから、取らない」ということになってしまいます。
お母さんからのお悩みでいうと・・・
「板書をちゃんと写しなさい」と強制するとできる
というのは、限界までがんばって目を凝らしているからできているのです。長続きさせようとすると、キレてしまう、ということも・・・
「目を凝らさないとできない(緊張させないといけない)」というのが問題となります。
また、
板書が超テキトーな上、字が汚い
板書が遅く、授業が頭に入ってない
全部ひらがなで板書してしまう
というのも、見分けがつきにくくて起きている可能性もあります。
遠くや近くが見えておらず、ぼやけていているものを一生懸命見ている。だから、労力がかかっており、板書が長続きしない。労力を軽減しようと、見れば分かるひらがなで書いてしまう。ということも、考えられます。(性格がいい加減でそうなっている場合もありますので、絶対に目に問題があるからとは言い切れませんが・・・)
2. 字を書くのが苦手:指先の神経が未発達
「板書が苦手」の2つめの原因は、「字を書くのが苦手」ということです。
黒板も見えている、手元を見るのも問題ない。
それでも板書が遅かったり、字が汚かったりする場合は、目ではなく、指先の神経発達に原因があったりするよ。
だとすれば、「ノートをちゃんと写しなさい」だけでは、どうやって写せばいいか、子どもは分からないですね。書きづらい、ってことですよね?
書きづらさを説明するのに、ゲームをやってみよう。
【小皿に入った豆を、お箸を使って、もう一つの皿に移す】
ゲームにチャレンジ!!
タマゴさんは利き手が左だから、右手でやってみてよ。
ぬおおおおお 豆を移すどころか、つまめないですよ〜
うぐぐぐぐぐ 豆が飛んでいっちゃったよ〜
あれ、先生、利き手の右手でやっているのに・・・
下手ですねえ!
じつは、私、ぶきっちょ。
そういや、先生、字も汚いですよね〜
ふふふ。言ってくれるね〜 そうなの、字が汚いんだよね〜
ということは・・・不器用な人には、たとえ利き手であっても難しいということですね!
そうだね。指先の神経が未発達の子どもにとって、鉛筆を使って字を書くという作業は、大人が利き手と反対の手を使って、お箸で豆を掴むという作業と同じようなものだよ。
そんな子に「ノートはきれいに書きなさい」「さっさと板書を写しなさい」というのは酷かもしれないですね。
ただでさえ手先を上手く動かせなくてストレスを感じているのに、更にプレッシャーをかけられると、イヤになっちゃいそう。
僕も子どものとき、そうだったよ。目が悪いのと、ぶきっちょ両方の原因で書くのが大嫌いでした。今は大丈夫ですけどね。
神経の未発達(身体的弱さ)が原因となって、文字を書くという動作が苦手なため、「板書が苦手」になるというイメージができたでしょうか?
3. 文字が歪んで見えている(認知力が弱い)
3 つ目の原因として考えられるのが、「認知力が弱い」というもの。
認知力というとイメージしにくいかと思いますが、「見る・聞く・話す」といった学習の土台となる能力が全体的に弱いという場合です。
このケースでよくあるのが、学校の先生から
「発達障害ではありませんか?」
などの指摘を受けるというものです。
先に説明した「視力」や「指先の神経発達」とは異なり、認識する知覚力が弱く、実物と異なって認識されている場合があります。
分かりやすくするために、極端な例を挙げると・・・
こちらの図のように、「上の立方体を写してみて」と、言われると、下の図のようにゆがんだ絵になってしまうことがあります。このような場合は、認知力の弱さが原因となっている可能性があります。
ただ、これに関しては、専門の機関で検診を受けなければ正確な判断をすることはできません。気になる場合は一度専門機関を訪ねられることをお勧めします。
「この子は板書が苦手?」と気づいたときに親ができること
「この子は板書が苦手かも」と気づいたら、まずは
真の原因を見極めること
が大切です。
1. 視力に問題があるかも? と思ったら
学校の視力検査では、一定の距離における視力しか検査できませんので、眼科医で視力全体のチェックをしてもらいましょう。
そうすれば、遠近どちらかに問題がある場合は原因がはっきりします。また、視力だけが問題なのであれば、視力トレーニングや、正しいメガネをかけることで解決が見込めるでしょう。
ただし、小学校低学年などのお子さんの場合は、“よく見える”ことよりも、“メガネをかける”ということにストレスを感じて、メガネをかけなくなってしまうことがあるので、気にかけてあげる必要があります。
2. 字を書くのが苦手かも?と思ったら(指先の神経が未発達)
次に、身体的な問題(指先の神経が未発達)が原因の場合ですが、これは年齢が上がるにつれて自然と解消されていくことがあります。
指先を使った体操やあやとりなど、子どもが楽しみながらできる遊びを通して、神経の発達を促すことも効果的です。
また、私が子ども向けトレーニングで良く使う指先体操の動画が見れるようになっています。是非、参考にしてください。
3. 文字が歪んで見えているかも?(認知力が弱い)
認知力の弱さが疑われる場合。「子どもが発達障害ではないか?」などと心配になった場合は専門の機関で一度検査を受けてみることをお勧めします。
まとめ:「板書が苦手?」と気づいたときに、親がやっていけないNG行動は「比較と強制」
「この子は板書が苦手だな」と感じられるのであれば、あなたがお子さんをしっかりと観察している証拠です。真の原因を見極めるためにも、暖かく見守りましょう。今まで以上にお子さんに寄り添う機会になりますよ。
暖かく見守るというと、何もしていないようで、焦りを感じてしまうかもしれませんね。でも、そんなことはないのです。子どもの小さな変化や、わずかな成長を見逃さない観察力が今後の成長の鍵を握っているのです。
では、今日のまとめ!
「板書が苦手」と思ったら、「ちゃんと写しなさい!」「なんでできないの!」の前に真の原因を見極めること。
1. 視力はどうだろうか?
2. 手先の神経発達はどうだろうか?
3. 認知はしっかりできているだろうか?
ですね。
はい、タマゴさん。よくできました!
あとひとつ、私から、お母さんにお願いしたいことがあるんです。
教えてくださーい!
「板書が苦手」に限ったことではないけど・・・
周りの子やお母さんの子ども時代と比べて「これくらいはできて当たり前」と決めつけて「ちゃんとノートを写しなさい!」と強制したり脅したりしないで、ということです。
でも、お母さんからすると「社会に出てから困らないように」と思って、必死だと思うんですよ。
成長を願うあまりに、比較や強制が行き過ぎると、社会で活躍できない子に育ってしまうんだ。
これについては、また別の機会に話すことにするね。
「板書が苦手」と思ったら、松谷先生に相談できますか?
はい。ビジョンチェックと呼ばれる視覚力を測るための検査を行っているよ。
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